【トラブルメーカー】社労士と相談して臨む契約更新
何十年も医療機関の労務に関っていると本当に驚くようケースがある。そのような場合ほどその職員の能力は採用時の期待した能力より低く、上手くお金を稼ぐことばかり考える。こちらがわかってないと思っているようであるがそのような職員の行動ほどよく見えるということが実態である。なにしろ全て、自分だけのために行動を起こすのでその考え方は予想できることが多い。
今回は雇用契約の更新時の職員の対応があまりに予想外であった事例を紹介する。
ここはS県の内科クリニック。開業して3年が経過するが職員の定着率いまいちである。その理由は診療時間の長さにあった。開業するときは周辺のクリニックには負けられないと午後7時半までの診療体制で日曜日も診療をしている。採用時の面接では従順に見え、数人の中から選んだ。経験はないが20代で後半で職務経験も6年あり医療事務の資格を有している。採用後3ヶ月間は時給ということで契約した。これは試用期間も含めてのことなのでこのクリニックでは職員同意の下にこのシステムを採用している。
最初は受けがよかったが、医療機関だから髪を束ねてと言っても数回注意しなければ改善しなかったり、服装にしても医療機関に合わないストッキングなどを平然とはいて出勤する。レセプト点検でも経験がないからわからない内容を聞いてくるのかと思いきや30分程度終わり「特になにもありません。」なんて調子である。
この人医療機関にそぐわない人だなあと思いつつも少しずつ理解してもらってなれて成長してくれれば良いと考えていた。そして3ヶ月が経過したので院長先生と相談すると人もあまり変えたくないしこの人材を本採用しようということになった。
そして固定給による1年更新の雇用契約書を渡したところ本人から「わかりました。後日返事します。」との事。返事するという話しぶりに?を思いひょっとしたら契約書の内容について何かあるのかもしれないと考えていた。
すると1週間ほどたって要請があり本人とあったところ「何点か疑問点があるので相談にいっている社労士さんとお話してもらえませんか?」との事。「それからこの会話を録音して良いですか?」と申し出た。「えっ社労士さんと話すの?」「録音することについてもちょっと待って!」と話すと「えー労働基準法違反になるような点がありそうなので」と応える。これまで雇用契約書を作成してきたがそのようなことを一度も言われたことがない。「そう、でも一存で決められない内容だから後ほど院長先生と相談してどうするか応えますから数日待ってください。」というと「今返事はいただけないのですか」というので「あなたもこの返事までに1週間かかったでしょ。だから少し待ってもらってもいいんじゃないの?」と応えると「わかりました」と応えてその日の話は終了した。
こんなことは初めてである。社労士が一職員の代行を引き受けると言うのである。日常の勤務態度を是正しようと注意していることがこのような結果となったのかもしれない。しかし、雇用契約書に労働基準法違反があるというが基本的に職業安定所に備え付けられた雇用契約書を基本としているので労働基準監督署にクレームをつけられるような内容でもない。
その経緯を院長に報告、弊社の顧問弁護士に相談することを決め対応することにした。弁護士の話は、録音や雇用契約書の交渉に必然性はないので拒否して良いとのこと。
数日後連絡してその結果を伝えると「相談して返事します。」との事。後日録音することと交渉することについては相手もしぶしぶ承知した上で本人が契約内容を指摘してきた。
・週40時間以上の場合残業が付くように記載して欲しい。
・残業代の計算方法がわからないので記載して欲しい。
・事前連絡もなく遅刻、欠勤、早退があると契約更新しない。
の3点についてである。
残業代やその計算については特に問題となるような内容でない。残業代は皆勤手当まで含めて計算している。
週40時間以上という記載についても記載しない点については労働基準法どおりとなるので違反している内容ではないし、記載してほしいというのであれば特に記載しても問題はない。
社労士がなんとか自分の成果を見せようとしてクレームをわざと付けているような感じである。
遅刻、欠勤、早退に関しては度重なるという文言を入れてくれ、これはあまりも厳しい内容であり労働基準法違反になると要求があったが労働基準監督署で確認すると「労働基準法違反にはならない。」「これが理由で更新しなくても有効である。」「ただし、その内容について裁判になった場合は個別案件によるので結果はどうなるかわからないが・・・・。」ということであった。
無断欠勤や遅刻、早退が度重なると契約更新しないというよりもこのような場合は当然解雇といえる。このようなアドバイスをする社労士さんはお金が稼ぎたいだけなのだろうか?その職員の業務上の問題点などは当然全く聞かず、職員の一方的な話だけを聞いてアドバイスをし自分が法の番人というような感じをいるのではないだろうか?
しかし、世の中にはこのような職員もいるので雇用契約書で雇用する側に問題が発生しないように注意しなければならない。