早期退職を防ぐための事前準備と面接のポイント(1/2)
経営・人材育成・接遇の課題を最短解決
医院経営総合戦略室
第23回
早期退職を防ぐための事前準備と面接のポイント(1/2)
Q. 採用してもすぐ辞めてしまう方が増えています。面接で見極めるポイント、お勧めの質問などがあれば教えてください。
A. 診療方針や就業環境等の情報を与え、応募者の要望や業務能力等が具体的に把握できるようなエントリーシートを記入させた上で複数で面接をしましょう。
[解説]
◆クリニック側の都合を優先させない
このところどの診療所においてもなかなか人材確保ができないという話を聞くことが増えています。募集方法も従来の公共職業安定所や折り込み広告、フリーペーパーでは、応募者自体も少なくネット広告や人材紹介会社の活用等も必要になっています。採用時のミスマッチによる1年未満の早期退職も増えていて、その原因として募集広告や面接で確認した条件と就業してからの条件の違いや説明不足、研修教育不足等が挙げられます。
診療所では新卒を採用することは少なく、ほとんどが中途採用です。事務系では他業種からの転職組が多く、医療に関わる職業意識が低い傾向がみられます。看護師は事前に技術を確認できず、採用後に技術不足がわかり退職してもらうケースもあります。能力や技術に問題がない場合でも、院長やスタッフとの人間関係がうまく行かなければ早期退職につながりやすいです。
診療所ではパート採用も欠かせません。常勤者の有給取得や忙しい時間等を補うために重要な役割を果たしています。パートスタッフには個々に家庭の事情があり、働く目的もさまざまで扶養範囲内で働くことが多く、目的とする収入や勤務希望が受け入れられなければ、退職していくケースも見られます。
人材確保が厳しい中、クリニック側の都合を優先させる採用は、早期退職につながりやすく、働きやすさを考慮した募集条件の検討やミスマッチにならないような面接方法、多少できなくても育てる姿勢がなければスタッフは安定しません。就業環境の配慮も求められ、院内規則や業務マニュアル等を整備することで早期退職を抑制する効果があります。能力ばかりを求めるのではなく、業務を覚えさせる研修や教育等がなければ、長く勤務できる確率は低くなります。早期退職を防ぎスタッフの安定を求めるのであれば、面接の判断ミスだけが原因でないことを理解しておかなければなりません。
◆募集前の事前準備
募集広告は、広告枠の大きさや料金によって掲載できる内容が限られます。給与条件や診療時間、休日、社会保険等に関することが中心であり、診療方針、就業形態、業務内容等具体的な情報が記載してあるケースは少ないです。どういう人材を求めているか明確でないこともあり、また、面接も職歴や業務について一方的に確認することが多く、どのようなクリニックであるか等情報をこちらから与えることがありません。自院を理解してもらうには書面等による確認や多くの質問をしてもらう姿勢が必要になります。
面接時や就業前に下記の内容についてわかりやすく説明できるように準備しておくといいでしょう。
・診療方針、業務内容
・就業状のルールや注意点、服装
・勤務希望、有給等休暇の取り方、各種届け出、手続き
・残業申請方法、退職手順
これらの内容について説明がなされていれば、ミスマッチや勤務後に起こるトラブルを最小限にとどめることができます。