事例で学ぶ事業承継の進め方[第1回]その1
事例で学ぶ事業承継の進め方 〜失敗しないための理論と実践〜
第1回
事業承継先の探し方と円滑に進めるためのポイント①
◆はじめに
高齢の開業医のなかには「そろそろ診療所の事業承継を…」と、パッピーリタイアを考えている方も多いと思います。もちろん、なかには「忙しい診療に疲れて勤務医に戻って責任の少ない範囲で診療したい」「一定の収入を得たので悠々自適に暮したい」といった理由から事業承継を考えている先生もおられるでしょう。ただ、事業承継は、金銭的な問題も含めてさまざまなトラブルがつきもの。そこで本企画では、どのようにすれば自院をスムーズに他の医師に承継してもらえるか、Win-Winの事業承継を実現するための進め方を具体的な事例も含めて考えていきます。今回は第1回ということで、最近の事業承継事情と注意点について紹介します。
◆事業承継を望む医師は増えている
医師が独立開業するにあたっては、事業承継と新規開業という大きく2つの選択肢があります。最近は結果的に新規開業を選んだとしても、事業承継を真剣に検討する医師は確実に増えています。私のもとにも「承継できる診療所を探している」という医師からの相談はよくあります。
理由は比較的少ないリスクで事業を軌道に乗せることができる可能性が高いからです。事実、事業承継の場合、設備投資にかかる費用や広告宣伝費は新規開業よりも総じて安い傾向にあり、すでに一定数の患者がついているため、立ち上げ時に「患者がなかなか集まらない」という苦労は
あまりありません。そのため、新規開業に関する相談でも、ほぼすべてと言っていいほど承継案件に関する話題がでます。とりわけ、内科系の診療所は競争が激しいこともあって、承継案件を探すケースが増えています。
(次回へ続く)